吉井川
今津屋橋から散歩スタート。
吉井川沿いを西へ、西へと歩いていきます。
冬の川は穏やかで、鴨たちがのんびりと泳いでいます。
陽が時折さす冬の散歩道。
風がさほど強くないので、陽の光がほほに柔らかく、手袋を脱いでちょうど気持ちがいい感じ。
穏やかな川面が日光を一面に照り返して、少し眩く、とても美しい様。
その中を動く黒い点の群れ。
ふう~。
冬には冬の風情あり・・・。
ふと立ち止まり、川面を眺めていると、物語を思い出しました。
いぬいとみこさんの書いた『川とノリオ』という作品です。
町外れを行く、いなかびたひと筋の流れだけれど、その川はすずしい音をたてて、さらさらと休まず流れている。
日の光のチロチロゆれる川底に、茶わんのかけらなどしずめたまま。
春にも夏にも、冬の日にも、ノリオはこの川の声を聞いた。
母ちゃんの生まれるもっと前、いや、じいちゃんの生まれるもっと前から、川はいっときの絶え間もなく、この音をひびかせてきたのだろう。
山の中で聞くせせらぎのような、なつかしい、昔ながらの川の声を―――。
で始まり、最後は、
ザアザアと音を増す川のひびき。
ノリオは、かまをまた使いだす。
サクッ、サクッ、サクッ、母ちゃん帰れ。
サクッ、サクッ、サクッ、母ちゃん帰れよう。
川は日の光を照り返しながら、いっときも休まず流れ続ける。
という文章で終わっています。
昔、何度も繰り返し読んだ『川とノリオ』。
今読んでも伝わってくるものがあります。
今だからかな?
吉井の流れは、昔も今も変わらず・・・。